ピルを飲みたいけど診察に時間がかかりそうで病院に行けないとき、忙しいからピルだけをもらうことはできないかと思う方もいるかもしれません。また、診察ではどのようなことをするのかわからず少し不安に思う方もいるかもしれません。
ここでは産婦人科でピルだけをもらうことはできるのか、また、処方の流れやピルの種類、費用の目安について説明します。
産婦人科でピルだけもらえる?
結論からいうと初診でピルだけをもらうことは難しいでしょう。
しかし、何度か処方されている場合で、服用していても特に問題がなければ、診察をせず処方のみをしてくれる医療機関もなかにはあります。
問診と血圧・体重測定は必要
問診や血圧・体重などの基本的な測定は必要となります。いずれも特に難しいことではありませんが、ピルを処方するにあたって非常に大切な情報となります。
ピルの処方ができるかを調べる段階のため、人によっては各種検査を行なうことがあります。
内診なしでの処方は可能
ピルの処方にあたって、内診(医師が手袋を装着して膣内から子宮・卵巣の状態を調べること)の必要は基本的にありません。
ただし、原因がわからない不正出血がある場合は子宮内膜症や子宮筋腫などの病気がないかを調べる必要があるため、内診やエコー検査をする可能性があります。
また、性交渉をしたことがない方も、基本的に内診の必要はありません。
産婦人科で処方されるピルの種類
ここでは実際に処方されるピルの種類について、ピル(中用量・低用量・ミニピル)、アフターピルについて説明します。
低用量ピルのなかには超低用量ピルと呼ばれているものがありますが、ミニピルとは異なるため注意が必要です。
ピル(中用量、低用量、ミニピル)
避妊のために服用するピルには、中用量ピル・低用量ピル・ミニピルの3種類があります。
中用量ピルは緊急避妊のためや、生理日を移動させるためなどに使用されます。中用量ピルのプラノバールはヤッペ法という方法で緊急避妊のために使用されます。中用量ピルには他にもいくつかの効果はあるものの、含まれるホルモン量が多いことから副作用が現れやすいことに注意が必要です。
低用量ピルは毎日服用することで避妊効果や、月経前症候群(PMS)・肌荒れ・月経不順・子宮内膜症・月経困難症などの改善が期待されます。副作用の種類は中用量ピルと同様ですが、低用量ピルにはより少ないホルモンが含まれているため、副作用が出にくくなっています。
ミニピルは中用量ピルや低用量ピルのようにエストロゲンが含まれておらず、黄体ホルモンのみが含まれたピルです。体質的に低用量ピルの服用でも難しい場合に処方され、避妊効果や子宮内膜症の改善のために使用されます。
アフターピル
アフターピルは妊娠の可能性がある性行為後に緊急避妊のために服用するピルのことです。
緊急避妊には、プラノバールを使用するヤッペ法、現在日本で一般的になっているレボノルゲストレル法(LNG法)、海外で一般的になっているウリプリスタール法の3つが存在し、それぞれ使われるアフターピルが異なります。
レボノルゲストレル法では黄体ホルモンが含まれたノルレボというピルを使用します。妊娠の可能性がある性交渉から72時間以内に服用することで避妊効果が期待できます。
ウリプリスタール法は、ウリプリスタール酢酸エステルを主成分とするエラというピルを使用します。妊娠の可能性がある性交渉から120時間以内に服用することで避妊効果が期待できます。
いずれも性交渉から24時間以内など早い時間に服用することで高い効果が期待できます。性交渉から何時間後に服用するべきかを間違って緊急避妊に失敗する方が多いため、間違えないように注意が必要です。
産婦人科でピルをもらうまでの流れ
では、実際にどのような流れでピルが処方されるのでしょうか。
問診票の記入から診察で行われること、ピルの処方まで、それぞれの段階で行なうことを詳しく説明します。
問診票の記入
まずは問診票を記入し、血圧と体重を測定します。
問診票ではピルの服用目的(避妊か緊急避妊かなど)、過去に服用したことがあるか、年齢や喫煙状況、既往歴など、ピルを服用しても問題ないかを判断するための質問に答えます。
体重測定については、肥満の方はピル服用による血栓症のリスクが高いため行います。また、高血圧の方だと心筋梗塞や脳卒中のリスクもあるため、血圧測定も大切な指標となります。
そのほか、当日の持ち物として保険証を持参するようにしましょう。避妊目的のピルは保険適用になりませんが、診察を受けると予想外のことが保険適用となるかもしれません。もしお持ちの方は基礎体温表やお薬手帳もあるとよいでしょう。
服装に指定はありませんが、気になる方はパンツよりスカートのほうが診察内容によっては受けやすくなります。
診察
診察でも、ピルを処方しても問題がないかどうかを確認します。
喫煙者の方や肝機能が低下している方、がんの可能性や視界がキラキラした後に偏頭痛が起こる方は処方ができない場合があります。また、ピルの重大な副作用に血栓症(血管が詰まる病気)があるため、血栓症のリスクがある場合は血液検査を行なうこともあるでしょう。
処方が可能な場合は、ピルの飲み方や副作用・注意点について説明がされます。
基本的に検査等はありませんが、がん検診や血液検査を定期的に行なうことがすすめられることがあり、医療機関によっては検査も同時に行なう場合があります。
低用量ピルによっては肌荒れの効果があるものや生理痛を改善するもの、むくみに配慮されたものなどがありますので、希望するものがあればこの時点で医師に相談しておくとよいでしょう。
支払い・ピルの受け取り
特に問題がなければピルが処方されます。
医療機関によって異なりますが、一定期間にわたって処方を受ければ数ヶ月分をまとめて処方してもらえたり、再診の必要がなく処方のみしてもらえたりすることもあります。
産婦人科で処方されるピルの費用
では、ピルの費用はどれほどなのでしょうか。ここでは保険適用となる場合と自由診療の場合に分けて説明します。
実際には下記のピルの費用に加えて、初診料や検査費用が加算されますのでご留意ください。
保険適用の場合
低用量ピルで保険適用後の費用は1,600円〜2,500円ほどが目安で、自費診療の場合より少し安価になるでしょう。
- 生理中に腰痛・頭痛・吐き気などが起こる月経困難症
- 生理が近づくと感情を抑えられなくなったり、腹痛が起こったりする月経前症候群(PMS)
- 子宮内膜が子宮外で増えたり剥がれたりをする子宮内膜症
上記の治療目的であればピルの費用に保険が適用されます。
自由診療の場合
低用量ピル1ヶ月分(1シート)で2,000円〜3,000円であることが多いでしょう。
避妊目的の場合は保険適用とならず、自由診療の値段になります。
アフターピルの場合も自由診療となります。ヤッペ法でプラノバールを服用するときは3,000円〜5,000円台であることが多く、ノルレボは相場が10,000円〜20,000円で安価であれば7,000円〜9,000円近く、エラは10,000円〜20,000円ほどであることが多いです。
自由診療であるため、費用はクリニックによって大きく異なる場合があります。アフターピルの処方では処方料や指導料などがかからないようにしている医療機関もありますので、近隣の産婦人科の対応を事前に調べておくとよいでしょう。
ヤッペ法が安価に見えますが、ノルレボやエラのほうが避妊できる確率が高いことも事実です。医師に相談のうえご自身の状況に適切なほうを選ぶようにしましょう。
ピルの服用中は定期的な検診が必要
検診の頻度としては服用から1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、以降3ヶ月おきに問診や体重測定、血圧測定といった基本的な検診を行なう必要があります。
問診ではピルを問題なく服用できているかどうか、副作用の有無、血栓症のリスクがないかについて確認されるでしょう。
もし血栓症のリスクがあった場合はピルの服用を中止する可能性があります。
また、6ヶ月や12ヶ月のタイミングでは子宮がん検診や性感染症の検査、血液検査などがすすめられるでしょう。
理由としては、低用量ピルの服用により乳がんのリスクが上がるためがん検診がすすめられます。また、ピルの避妊効果が得られてコンドームを使用せずに性交渉をすると性感染症のリスクも考慮されます。性感染症の検査についても検討しておくとよいでしょう。
産婦人科でピルだけもらいたい場合によくある質問
ここでは産婦人科でピルだけもらいたい場合によくある質問に回答します。
未成年でもピルの処方は可能ですか?
保護者の同席や同意書がなくても処方可能な医院もあります。方針は医療機関により異なるため、お近くの医院の対応を事前に確認しておくとよいでしょう。
ネットでピルを購入することは可能ですか?
可能ですが、医師によるオンライン診療を経て処方してもらいましょう。
転売や通販でピルが販売されていることがありますが、個人輸入のものが法律違反をしたうえで販売されている可能性や、不良品や偽物が紛れているリスクがあります。服用後は医療機関であっても適切なサポートが受けられないリスクがあります。必ずオンライン診療を経てピルを処方してもらいましょう。
ピル処方までの所要時間はどれくらいですか?
検査の有無が医療機関や人の体調によって異なるため、一度医療機関に確認したほうがよいでしょう。
問診や血圧測定・体重測定が終わった後、ピルの説明に関しては目安を15分としている医院があります。
まとめ
産婦人科でピルだけをもらえるかどうか、処方の流れや種類、費用について説明しました。
初診でピルだけをもらうことは難しく、問診や体重測定・血圧測定が必要となります。必要であれば各種検査を行ない、問題がなければピルの説明後に処方となります。
また、服用を開始してからは一定の期間ごとに定期検診があることを留意しておきましょう。
ピルの服用により血栓症や子宮がんのリスクが上がること、またピル服用で避妊効果が得られることからコンドームを使用しないと性感染症につながるリスクもあるため、これらを見逃さないために定期検診が大切です。
[…] 産婦人科でもピルを処方してもらうことが可能とされており、処方してもらうには、問診、血圧・体重などの測定、場合によっては各種検査を行なうこともあります。 また、子宮内膜症や子宮筋腫の可能性が考えられるときは、内診やエコー検査をする可能性も考えられます。 参考:ルナレディースクリニック […]