【医師監修】治療法はあるの?成人T細胞白血病の検査方法、治療法、対処法を解説

成人T細胞白血病という病気をご存知でしょうか?

成人T細胞白血病は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)というウイルスの感染が原因で発症する病気で、治療が難しい病気です。

発症すると感染したT細胞ががん化して無制限に増殖し、免疫不全などの症状を引き起こします。今回は、成人T細胞白血病の検査方法や治療法、対処法を解説します。

成人T細胞白血病は厄介な病気

血液中には、体の外から侵入した細菌やウイルスなどの病原体を排除する役割を持つ白血球が存在します。白血球には、顆粒球、単球、リンパ球などの種類があります。さらにリンパ球はT細胞、B細胞、NK細胞に分類され、免疫の重要な役割を担います。

成人T細胞白血病の原因ウイルスであるHTLV-1は、T細胞に感染し、T細胞をがん化させることがあります。HTLV-1の厄介なところは、潜伏期間が40年以上と長く、感染していても気づかず、発症した場合には早急な治療が必要になることがあります。

成人T細胞白血病の検査方法

成人T細胞白血病は、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の4つに区別されています。病型によって治療法が異なることがあるので病型や合併症の有無の確認、治療方針を決定するためにさまざまな検査が行われます。

血液検査

血液検査にはHTLV-1に感染している人を見つけるためにスクリーニング目的に行う場合と診断を確定させるために行う場合の2パターンがあります。

まず、スクリーニング検査ではHTLV-1抗体を調べる検査を行います。この検査で陽性となった場合は、さらに精密検査を受ける必要があります。

一方で陰性だった場合には感染はしていないと考えられますので安心してください。また、診断確定のための検査としては、顕微鏡を使って血液を目視で調べ、異常なT細胞の増殖を探す検査があります。

異常なT細胞の増殖が認められた場合には成人T細胞白血病・リンパ腫を疑います

骨髄検査

背骨に針を刺し、骨髄を採取して検査をします。採取した骨髄液中の細胞の形を顕微鏡で調べます。

病理検査

腫れているリンパ節や、皮疹が出現した皮膚を一部切り取って顕微鏡で検査を行います。採取した組織は、遺伝子検査にも用いられます。

遺伝子検査

採取した血液を調べて遺伝子や染色体に異常の有無を調べます。

CCR4抗原検査

がん化したT細胞の表面には、CCR4という変化が現れることがほとんどです。CCR4抗原検査が陽性である場合にはCCR4に結合することで腫瘍を選んで攻撃する分子標的薬という薬が使えることがあります。

超音波検査・CT検査

合併症や臓器の病変などを確認します。

成人T細胞白血病の治療法

成人T細胞白血病は、病型によって治療法が異なり、場合によっては様子をみることしかできないこともあります。治療ができたとしても根治が難しいことも多いです。

免疫系で重要な役割を果たす、T細胞ががん化するので免疫不全の原因になることがあります。免疫不全によって感染症になることもあるので成人T細胞白血病の治療と並行して感染対策が必要です。

化学療法

急性型やリンパ腫型、さらには急激に症状が進行する可能性がある場合には化学療法が選択されます。近年では、がん化した白血病細胞に特徴的にあらわれるCCR4に対して結合し、腫瘍を攻撃する分子標的薬が開発されています。

分子標的薬は、正常な細胞を傷つけることなく抗がん作用を発揮できます。そのため、従来の抗がん剤に比べると副作用が少ないのが特徴です。近年では、成人T細胞白血病に有効な分子標的薬が開発されているので、将来的には治癒率が上がる病気になる可能性もあります。

造血幹細胞移植

70歳以下であれば造血幹細胞移植が検討されます。血液中に存在する赤血球、白血球、血小板などの細胞は、骨の中心にある骨髄で作られます。

骨髄に存在する造血幹細胞は、血液を作り出す細胞であるため、正常な造血幹細胞を移植することでT細胞が正常に作られます。

成人T細胞白血病は、化学療法での根治が難しいので造血幹細胞移植によって根治を目指します。

経過観察

HTLV-1を保有しているけど発症していない場合や、くすぶり型、慢性型などでは化学療法は行わずに経過観察を行います。急性型へと症状が進行した場合に化学療法を選択します。経過観察中には他者への感染症対策を行います。

成人T細胞白血病の対処法

成人T細胞白血病にならないためにはHTLV-1に感染しないようにする必要があります。HTLV-1の感染経路を知り、対策をしましょう

感染経路を理解して予防する

成人T細胞白血病は、日本では沖縄、鹿児島、宮崎、長崎などの西日本に患者が多いとされています。

HTLV-1の感染経路は3つあり、母子感染、性行為、輸血があります。母子感染では母乳による感染が多いです。母親が感染している場合には、母乳を与えずに人工乳での保育が進められています。妊婦検診でHTLV-1の抗体検査をするので検診を必ず受けてください。

性行為による感染では、精子中のウイルスが原因となるので男性から女性へと感染します。夫婦間の性行為での感染は、10年間で60%とされています。夫婦間での感染については、成人T細胞白血病を発症した報告がないため特に対策されていませんが、コンドームを使うことで感染を予防できます。

過去には輸血によってHTLV-1に感染することがありましたが、1986年以降は輸血用血液の検査が発達してきたため、輸血からの感染はほとんどありません。

日常生活では感染のリスクはない

感染経路として母子感染、性行為、輸血がありますが、日常生活で感染することはありません。家族や大切なパートナーがHTLV-1に感染している場合でも日常生活で3つの感染経路以外での対策は不要です。

患者数は増加傾向

成人T細胞白血病を発症する患者数は、人口の高齢化によって増加傾向にあります。一方でHTLV-1感染者(キャリア)は減少傾向を示しています。長崎県の妊婦のHTLV-1保有者は1950年では6.06%でしたが、2010年には0.06%に減少しています。長崎県では、21世紀後半には撲滅できると予想されています。

気になることがあれば医療機関へ

HTLV-1に感染しても目立った症状があらわれないため、気づかずに日常生活を過ごしている方もいます。そのため、成人T細胞白血病を発症してから受診する場合も多く、治療が難しい疾患であるため早めの治療が必要です。

気になることがあれば医療機関へ受診をしてください。母子感染が多いので妊娠検診を受け、感染している場合には子に母乳を与えずに人工乳で育てるなどの対策も行って下さい。

参考文献