エイズの病原体って何?HIVとの関係や感染経路・検査から治療方法まで解説

カンジダの治療方法

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

エイズとは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって免疫細胞が破壊され、さまざまな病気を発症してしまう状態を指します。主に性的な行為や血液などから感染し、インフルエンザに似た症状をはじめ、あらゆる感染症にかかる点が特徴です。薬で症状を抑えることはできるものの、残念ながら完治することはありません。

ここでは、エイズの主な症状や感染経路、適切な予防方法や治療法などについて解説します。当記事を最後までご覧いただければ、エイズの正しい知識が身につき、今するべきことが明確になるでしょう。

エイズ・HIVとは何?

エイズとは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって、さまざまな疾患が起こる状態を意味します。

・エイズ:HIVにかかり、さまざまな疾患を起こす状態

・HIV:エイズを引き起こすウィルス

エイズとHIVはセットで耳にすることが多いため、各つながりや関連を正しく理解しておくことでエイズの病原体についてもスムーズに頭に入るようになるでしょう。2つの意味について詳しく説明します。

エイズの意味とは?

エイズ(AIDS)の頭文字の意味は以下のとおりです。

・A:Acquired(後天性)

・I:Immune(免疫)

・D:Deficiency(不全)

・S:Syndrome(症候群)

つまりエイズは生まれつきではなく、後天的に免疫機能の不全に陥り、さまざまな症状に見舞われる状態を意味します。エイズに遺伝との関わりはなく、原因はHIVと呼ばれるウィルスです。

HIVとは?

HIVの頭文字が示す意味は以下のとおりです。

・H:Human(ヒト)

・I:Immune-Deficiency(免疫不全)

・V:Virus(ウイルス)

つまりHIVはヒトに感染し、免疫不全を起こしてしまうウィルスのことです。

2つの単語のつながりとは、エイズはHIVにより発症した状態、HIVはエイズの原因となるウィルスです。HIVについて、もう少し深掘りします。

エイズの病原体が「HIV」

エイズの病原体は、HIVと呼ばれるヒト免疫不全ウイルスです。HIVはTリンパ球やマクロファージなどに感染し、ヒトの免疫細胞を破壊します。Tリンパ球やマクロファージは、ヒトの体をさまざまな細菌やカビ、ウィルスなどの病原体から守ってくれる免疫細胞です。

HIVによって免疫細胞が破壊されると、あらゆる疾患にかかりやすくなります。

感染経路と予防法

HIVの感染経路は大きく3つです。

・性的な行為による感染

・血液からの感染

・母子による感染

HIVは空気感染のリスクはなく、性的な接触や血液、母子などに起因して感染します。それぞれの感染経路について、詳しく見ていきましょう。

性的な行為による感染

性的な行為は、最もHIV感染のリスクが高いです。精液や膣分泌液に含まれるHIVは、以下の経路を介して侵入します。

・女性:膣粘膜

・男性:亀頭部分(粘膜)に生じる細かい傷

上記のほか、男性同士の性的接触の場合は腸管粘膜からHIVが侵入します。膣や口腔の粘膜と比較し、腸管粘膜は傷つきやすく、HIVの侵入を許しやすいのが特徴です。つまり、男女間の性行為より、男性同士の性的接触のほうが感染リスクは高いと言えます。

効果的な予防法

性行為によるHIVの感染を防ぐためには、コンドームをしっかり着用することが大切です。HIVは血液、精液、膣分泌液などに多く分泌されます。したがって、体液が粘膜や傷がついた箇所に触れないようにすることが重要です。

オーラルセックスの場合も、口腔粘膜からHIVが感染するリスクが考えられるため、コンドームの使用は欠かせません。

血液からの感染

HIVは血液を介して感染します。例えば以下のケースには注意が必要です。

・輸血

・医療現場の針刺し事故

・注射器や注射針による麻薬の回し打ち

現状、日本赤十字社がすべての輸血血液に対し、厳格なHIV検査を実施しているため、輸血による感染リスクは極めて低いと言えます。

効果的な予防法

血液感染を防ぐための予防法は以下のとおりです。

・注射針を安全に取り扱う

・注射針を適切に廃棄する

・注射器や注射針を使い回さない

・針刺し事故が生じた場合は2時間以内に抗HIV薬を内服

注射器を回し打ちするなど、医療従事者ではない人により薬物接種の時に行われる行為も感染リスクを高めます。

母子による感染

母子によってHIVが感染するケースは以下のとおりです。

・出産時の産道感染

・母乳による感染

・胎内感染

一見、母子感染を防ぐのは困難と感じるかもしれませんが、効果的な予防法が複数あります。

効果的な予防法

母子による感染に効果的な予防法は以下のとおりです。

・妊娠初期のHIV検査

・妊娠中の抗HIV療法

・陣痛前の選択的な帝王切開

・帝王切開時のAZT点滴投与

・出生児のAZTシロップ投与

・出生児への人工乳による授乳

現在、上記の対策を導入することで、母子感染率は0.5%未満に低下しています。

主な症状

エイズの主な症状は、以下のステージによって異なります。

・感染初期

・無症候期

・発症後

感染初期はエイズならではの症状が表れないため、自覚できないケースも多いです。それぞれの項目について、具体的に見ていきましょう。

感染初期

HIV感染初期(感染から2〜6週間)は、50〜90%の患者に以下の症状があらわれます。

・発熱

・頭痛

・下痢

・筋肉痛

・咽頭炎

・皮疹(ひしん)

・リンパ節の腫れ

ただし、風邪やインフルエンザなどの症状と似ているため、判断するのは簡単ではありません。

無症候期

無症候期(5〜10年ほど)はその名のとおり、症状があらわれない期間を含む時期です。時折、短期間でAIDSを発症する場合もありますが、免疫力が徐々に落ちていくのが特徴です。AIDSを発症した場合、日和見感染症と呼ばれるさまざまな病気を併発します。主な症状は以下のとおりです。

・下痢

・著しい寝汗

・急激な体重の減少

無症候期は、上記の症状が継続的に襲ってきます。適切な治療を行わなければ数年で死にいたるケースもあるため、該当の症状がある場合は即時病院へ行きましょう。

発症後

およそ5〜10年の無症候期を終えると、いよいよエイズが本格的に猛威をふるい始めます。エイズ発症後は、健康なら感染しないようなあらゆる病原体が原因で、「エイズ指標疾患」と呼ばれる23種類もの病気になる危険性が高まります。主な「エイズ指標疾患」は以下のとおりです。

・カンジダ症

・クリプトコッカス症

・ニューモシスチス肺炎

23種類の「エイズ指標疾患」のうち、一つでも発症していることが分かれば、エイズに罹患していると確定されます。

症状による特定が難しい

HIV感染は以下の理由につき、症状による特定が難しいと言えます。

・感染初期(感染から2〜6週間)は風邪やインフルエンザに似た症状があらわれる

・無症候期(5〜10年)は症状が出ないことも多い

エイズと確定できる症状があらわれるまでには、感染から5〜10年ほどかかるのが厄介なところです。少しでも気になる症状が続いた場合、早めに検査キットで確認しましょう。

診断・検査方法

「もしかしたらエイズかもしれない…」と疑われる症状があらわれたら、すぐに行動することが大切です。本項ではエイズの診断・検査方法を解説します。

エイズ感染の有無は、検査キットで簡単にセルフチェックが可能です。早速、それぞれの項目について見ていきましょう。

検査キットによる自己確認ができる

エイズにかかっているかどうかは、検査キットで自己確認ができます。検査キットは、男女問わず、インターネットを通じて取り寄せが可能です。価格は10,000円前後が相場で、エイズのほか、以下のような性感染症の有無も調べることができます。

・梅毒

・B型肝炎

・性器カンジダ症

・性器クラミジア

・性器淋菌感染症

・膣トリコモナス症

少しでもエイズの疑いがある人はぜひ、検査キットでセルフチェックをしてみましょう。

検査ができる科

早急にHIV検査を受けたい人は、病院に足を運ぶのがおすすめです。ただし、HIV検査ができる科は男女によって異なる点に注意してください。

それぞれの性別ごとに、具体的な内容を見ていきましょう。

男性

男性が病院でHIV検査を受ける場合、性病科や泌尿器科を受診するのが基本です。それぞれの科ごとの対応範囲を紹介します。

性病科性感染症全般
泌尿器科・腎臓や尿道などの尿路系
・陰茎や前立腺などの男性生殖器系

性病科は性病の専門性に長けています。どちらを選ぶべきか迷った場合は、性病科を選んでおけば間違いはないでしょう。

女性

女性が病院でHIV検査を受けるなら、性病科や婦人科を受診するのが一般的です。

性病科性感染症全般
婦人科膣や子宮、卵巣など女性特有の疾患

どちらの科を受診しても問題ありませんが、心配なら事前に電話で確認してみると良いでしょう。

検査内容

病院でHIVの検査を受ける場合、血液検査が実施されます。HIV検査の大まかな流れは以下のとおりです。

①全国の保健所などでエイズ検査を申込みする

②検査前のカウンセリングを受ける

③採血

④1〜2週間後に結果の通知が届く

検査を受けるタイミングは、感染する機会があってから3ヶ月後以降が望ましいです。早いタイミングの検査で陰性が出ても、後に結果が変わる可能性があります。

保健所ではHIV検査を無料で受けることができるため、ぜひ気軽に活用してみてください。

エイズの治療方法

エイズ感染時の治療方法についてですが、残念ながら、エイズを完治させることはできません。

しかし、薬の服用で症状を抑えることなら可能です。

完治はできない

現時点では残念ながら、エイズを完治させることはできません。ただし、医療技術は日進月歩です。将来的に画期的な医療技術が開発された場合、HIVを完全に除去できる未来が訪れるかもしれません。

薬の服用で症状を抑えることは可能

現状、体内をめぐるHIVを完全に根絶することはできませんが、薬の服用で症状を抑えることは可能です。エイズの治療薬に関するポイントをまとめます。

・HIVの増殖をおさえ、免疫力の維持が可能

・治療薬を飲み続けることで、通常の生活を送ることができる

・より高い治療効果を得るためには早期発見がカギ

医師の指示に従い、継続的に治療薬を服用すれば、子どもを安全に出産することも可能です。

とはいえ、発症前と比較するとエイズ発症後の治療は難易度が上がります。早期発見と早期治療が、HIV感染に打ち勝つポイントと心得ておきましょう。

まとめ

エイズおよびHIVについて、さまざまな視点から解説しました。

エイズは一度罹患してしまうと、完治できない恐ろしい病気です。ただし、継続的に治療薬を服用すれば、通常の生活は問題なく送れるようになります。

少しでもエイズの可能性が疑われる人は、すぐにでも検査キットによるセルフチェックを行うか、病院で血液検査を受けてみてください。

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