望まぬ妊娠を避ける避妊法6選|それぞれのメリット・デメリットを紹介

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

「子どもができると困るのに、彼が避妊してくれない…」という悩みは今も昔も変わりありません。

これは、昔の避妊法が男性任せのものばかりだったからです。現代の避妊法は女性が主体となってできるものが多く、自分の身体を自分で主体的に守れるようになりました。

避妊法にはどのようなものがあるのか知りたいとお考えの方に向けて、さまざまな避妊法の特徴とその成功率、避妊に失敗した場合の対処法などをご紹介します。

望まない妊娠を避けるための避妊法

主な避妊法には、コンドーム、ピル、避妊リング(IUD)、ミレーナ(IUS)、リズム法、避妊手術などがあります。それぞれの避妊法の成功率は、上の表の通りです。これはあくまでも正しく使えた/行えた場合の確率であり、正しく使えない場合は避妊成功率がこれよりもかなり低くなります。

日本では、性交渉歴のある未婚者の90%、既婚者の40%が避妊を実施しており、そのほとんどがコンドームや膣外射精であるという報告があります。これらは男性主体の避妊法であるうえに、避妊成功率が低いのが特徴です。

ここではコンドームを含め、現在日本で利用できる避妊法ついて説明するとともに、メリットとデメリットをまとめました。

コンドームを使用する

現代の日本で最も普及している避妊法が、コンドームです。コンドームは、ゴムでできた細長い袋を射精前の男性器にかぶせることで、精子が膣内に進入することを防ぎます。

メリット

コンドームのメリットは、薬局で手軽に購入できることです。病院を受診する必要がないため、突然の性行為の際にも対応が可能です。また、使用に特別な知識やテクニックが必要ないのも大きなポイントです。

もう一つのメリットは、性感染症の予防効果があることです。物理的に男性器を覆ってしまうので、精液とともに侵入する病原体もある程度防ぐことができます。

デメリット

コンドームのデメリットは、男性主体の避妊法であることです。女性が避妊を希望しても、男性が装着を拒否するとどうにもなりません。

また、正しいタイミングや装着方法を守らないと避妊効果が落ちてしまいます。正しい使い方での避妊成功率は98%と高い確率ですが、一般的な使用法での避妊率は82%とかなり低いです。性行為中の脱落や破損も多いです。緊急避妊薬の処方を希望し受診した患者さんの6割が、コンドームの失敗によるものという報告もあるほどです。

ピルを服用する

低用量ピルとは、女性ホルモンを組み合わせて作られた錠剤で、コンドームや緊急避妊薬よりも避妊効果が高い避妊方法です。ピルに含まれる女性ホルモンを体内に取り入れることで脳をだまし、排卵日に排卵が起こらないようにして妊娠を防ぐ仕組みです。

ピルには低用量ピルだけでなく、中用量ピルやアフターピルがあり、使い方や目的によって使い分けます。

メリット

低用量ピルの最も大きなメリットは、高い避妊効果です。毎日同じ時間に服用できれば99.7%の避妊効果があり、飲み忘れたとしても91%の避妊効果を期待できます。これは避妊手術と同程度の高い避妊成功率です。

避妊手術と異なり、服用をやめれば妊娠できる状態に戻るのもメリットの一つです。

また、膣外射精やコンドームを使用するのとは違い、女性が自分でしっかり妊娠リスクを回避できる点も見逃せないメリットです。

さらに、低用量ピルの効果は避妊だけではありません。避妊効果の他に、PMSやニキビ、生理痛や生理不順、子宮内膜症の改善など女性特有の悩みに効果的です。

デメリット

低用量ピルの数少ないデメリットの一つは、性感染症を予防できないことです。低用量ピルを飲んでいても、コンドームとの併用をおすすめする理由はここにあります。

飲み忘れが多いと効果が出ないのもデメリットです。毎日忙しくしているとつい飲むのを忘れたり、休薬期間のある21錠タイプの場合は内服再開を忘れてしまったりということが時々起こります。ズボラな方は、休薬期間のない28錠タイプをおすすめしています。

また、非常にまれではありますが、低用量ピルは血栓症という重大な合併症を起こすことがあります。足の静脈に血の塊ができる病気で、塊が肺に飛ぶと肺塞栓症という命に関わる病気につながることがあります。40歳以上の方、肥満の方、タバコを吸っている方などは血栓症を起こしやすいことがわかっていますので、場合によってはピルの処方ができないことがあります。

避妊リング(IUD)を装着する

避妊リング(IUD)は、子宮の中にプラスチックの器具を挿入し、妊娠を防ぐ方法です。リングと呼ばれてはいますが、現在の器具はT字型をしています。

IUDがどうして妊娠を阻止するのかについては、詳しいことはわかっていません。異物を子宮の中に挿入することで炎症が起き、精子に影響を与えるという説が有力です。また銅が付加されたIUDの場合は、銅による殺菌作用が精子の働きを低下させる可能性があります。

器具の挿入には、婦人科の診察が必要となります。

メリット

IUDのメリットは、高い避妊効果です。最近の報告では銅付加IUDの妊娠回避率は、装着初年度で99.5%、5年間では98.1%と、一度挿入するとほとんど妊娠の心配をしなくて良くなります。

また、IUDを抜去すると妊娠できるようになるのもメリットの一つです。同じように高い避妊効果を示す方法に避妊手術がありますが、避妊手術は一度行うと再び妊娠できるようにすることはできません。

デメリット

IUDのデメリットは、挿入のために婦人科を受診し、内診を受けなければならないことです。これは妊娠経験のない思春期から20歳代の女性にとっては非常に大きな心理的負担となるため、IUDは主に40歳代以上で閉経が近い女性や経産婦の方におすすめすることが多いです。

また、IUDは一度入れると2〜5年間は使用するものですので、例えば産後の数ヶ月間のみ避妊したいなど、短期間の避妊には不向きです。

ミレーナ(IUS)を装着する

ミレーナ(IUS)は、子宮内避妊器具(IUD)の一つです。T字型の器具であり、柔らかいプラスチックでできています。IUDと同じく子宮の中に挿入し、妊娠を防ぎます。

ミレーナには黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が付加されており、挿入している間、少しずつ子宮内膜に黄体ホルモンが染み出します。それにより子宮内膜の増殖が抑えられ、受精卵が子宮内膜に着床しにくい状況を作ることで避妊効果が得られます。一度挿入すると、最長5年間はそのまま使用することができます。

器具の挿入には、婦人科の診察が必要となります。

メリット

ミレーナのメリットは、何と言っても非常に高い避妊効果です。銅付加IUDもさらに妊娠回避率が高く、装着初年度で99.9%、5年間では99.5%となっています。5年間何もしなくても良いというのもポイントで、低用量ピルのように毎日薬を飲んだり、コンドームのように性行為のたびに使用したりといった手間がないのは本当に楽です。

また、黄体ホルモンによる子宮内膜の増殖を抑える効果は、妊娠の阻止だけではありません。生理痛の重い月経困難症や生理の量がものすごく多い過多月経の治療としても使用されており、これらの場合は健康保険の適用となります。さらに、更年期障害で女性ホルモン補充療法を行う際の支持療法にも使えます。

コストパフォーマンスが高いのも見逃せません。避妊目的でミレーナを挿入する場合と、5年間低用量ピルを飲み続ける場合の費用を比べると、ミレーナの方が圧倒的に安くすみます。

デメリット

ミレーナの数少ないデメリットは、IUDと同様、挿入のために婦人科を受診し、内診を受けなければならないことです。したがって、IUDと同様、避妊目的のミレーナの挿入は主に40歳代以上で閉経が近い女性や経産婦の方におすすめすることが多いです。

また、黄体ホルモンの作用により、挿入後半年くらいは不正出血が見られることがあります。

まれにミレーナが脱落してしまうことがありますので、半年〜1年に1度は定期検診を受けましょう。

リズム法を導入する

リズム法は、月経周期から排卵期を推定し、排卵期の後のみ性行為をすることによって妊娠を防ぐ方法です。

生理周期が規則的な場合、排卵は次の生理予定日から逆算して12〜16日目に起こるので、排卵日をある程度推定することが可能です。また基礎体温を測定することによって、低温期と高温期を確認します。低温期から高温期に切り替わったときに排卵が起こっているので、より正確に排卵日を推定することができます。

排卵の推定日と、精子・卵子の生存可能期間から考えて、受精しない時期のみに性行為をします。

メリット

リズム法のメリットは、特別な器具や薬剤がいらない点です。婦人科の受診も必要ありません。また男性の手を借りずに女性主体でできるのも大きなメリットの一つです。

デメリット

リズム法のデメリットは、確実性がないことです。女性の月経周期は、過労やストレスなどささいなことで変わります。また、基礎体温を毎日きちんと測らないと、排卵日を正しく推定することは困難です。確実性がないため、コンドームなど他の避妊法との併用が必要です。

また、女性が主体となってできる方法ですが、排卵期には性行為をしないという男性の協力も不可欠です。非協力的な男性の場合は全く避妊効果が期待できません。

避妊手術を受ける

避妊手術とは、手術で精子や卵子の通り道を物理的に塞ぐことで、受精できないようにする避妊法です。男性の場合は精管を、女性の場合は卵管を縛ります。一度手術を行うと、基本的にはその後一生妊娠することはありません。

男性も女性も手術を実施することができますが、男性の場合は日帰りで行える比較的簡単な手術であるのに対し、女性の場合は入院が必要となります。

メリット

避妊手術のメリットは、避妊効果の高さです。理論的には、手術後は一生涯にわたり妊娠することはありません。性行為のタイミングを考えたり、薬を飲んだりする必要はありません。

デメリット

避妊手術のデメリットは、元に戻すことができないことです。したがって避妊手術は母体保護法で定められた以下の人に限られます(母体保護法第3条)。出産経験のない方が適応になることはほとんどありません。

一 妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの
二 現に数人の子を有し、かつ、分娩ごとに母体の健康度を著しく低下するおそれのあるもの

また、非常にまれに妊娠してしまった場合は、子宮外妊娠になりやすいと言われています。

さらに、性感染症を予防する効果はないので、性行為の際にはコンドームを併用することが望まれます。

避妊が失敗した場合はアフターピルの服用を

「コンドームが破れてしまった!」など、万が一避妊に失敗した可能性のある場合は、アフターピルの処方を受けましょう。

アフターピルとは、いざという時に役立つ緊急避妊薬です。受精卵の着床を防ぐもので、性行為後72時間以内、薬の種類によっては120時間以内に服用することで避妊作用が期待できます。また、性行為後服用までのタイミングが早ければ早いほど避妊率は高まるため、服用を検討している場合は早めの診療をおすすめします。

アフターピルは望まない妊娠のリスクを減らしてくれるお薬ですが、一方でデメリットも存在します。ホルモンをコントロールするお薬のため副作用が出る可能性もあります。副作用は吐き気、頭痛、倦怠感といった症状ですが、個人差があり一概には言えません。薬と上手く付き合っていくには、副作用の症状や対処法を正しく理解しておくことが大切です。

避妊に関する注意点

避妊に失敗した方によくある勘違いと、避妊に関する注意点をまとめました。心当たりがある方もない方も、ぜひ覚えておいていただきたいことです。

膣外射精は避妊法ではない

膣外射精を避妊法だと思っている方が男女ともに多いですが、それは間違いです。膣外射精には避妊効果はありません。その場のムードに流されず、冷静に断る勇気を持ちましょう。

シャワーやウォシュレットは避妊効果がない

「射精した後にシャワーやウォッシュレットで流せば大丈夫」という誤った知識を持った方が時々いらっしゃいますが、それは誤りです。

まず、シャワーやウォッシュレットの水は、膣の内部まで届きません。外陰部を清潔にし、性感染症を予防する効果はあるかもしれませんが、そもそも射精が行われた場所を洗い流すことはできないので、避妊法としては全く無意味です。

また、万が一射精の直後に膣の内部を洗い流すことができたとしても、その時点では既に相当数の精子が子宮へ向けて移動していますので、あまり意味のないことです。

まとめ

以上、主な避妊法について、メリットとデメリットを解説するとともに避妊に失敗した場合の方法や避妊に関する注意点をまとめました。

避妊は女性の身体と心を守るために必要な知識です。今はお相手がいない、という方でも、将来のためにしっかりとした知識を身につけることは非常に大切です。

避妊法について興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。