性器にかゆみと強い臭い、分泌物の変化が現れる「トリコモナス」と呼ばれる性感染症があります。トリコモナスは、自然治癒しない病気で、これまで性経験のない人や子どもでも、タオルや便器、浴槽から感染することがある病気です。
薬を飲めば、病原体を死滅することができますが、中には自覚症状がない人もいるため周囲の人の感染が分かったら検査を受けることが大切です。
今回は、トリコモナスとはどのような病気か、原因や症状、治療法、予防方法を解説します。また、よくある質問もまとめました。
トリコモナスとは
トリコモナスの正式名称は「膣トリコモナス症」といいます。「膣トリコモナス原虫」と呼ばれる病原体が性器に入り込むことで炎症を起こす性感染症です。この原虫は肉眼では見ることのできないほどのとても小さな微生物です。
主な感染経路は性行為ですが、そのほかにもタオルや下着、浴槽、便器でも感染することがあります。それゆえに、これまでに性行為の経験がない人や子どもにも感染することがある病気です。
男女で寄生する部位が異なり、男性では前立腺や精のう、尿道に寄生し、女性は膣内や子宮頚管、尿道や膀胱に寄生します。世界的には感染者数が多い性感染症ですが、日本では減少傾向にあります。
トリコモナスは感染している人の約20~50%に自覚症状がありません。さらに、症状が出ても似たような症状が現れる性感染症があり、症状の程度にも個人差があるため、適切な治療を受けるためには医療機関で検査を受けましょう。
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トリコモナスの原因
トリコモナスの大きな原因は、性行為などで膣トリコモナス原虫が性器に入り込むことです。膣トリコモナス原虫は直径10~25μm程度の大きさで、肉眼では確認できません。精液や膣分泌液に潜伏しており、コンドームを使用しない性行為で感染します。
さらに、感染者が使用したタオルや下着に触れることでも感染することがあります。また、膣トリコモナス原虫は水の中でも数時間程度であれば生きられるため、浴槽や濡れたタオル、便器などからも感染する危険があります。性行為の経験がない子どもでも感染することが少なくありません。
男性で尿道に感染した場合は、排尿時に一緒に膣トリコモナス原虫が流されてしまいます。そのため、自宅や学校、公共機関、商業施設のトイレの便器などからも感染するため注意が必要です。
トリコモナスの症状
トリコモナスは男女ともに感染する病気です。とはいえ、症状の現れ方には少し違いがあります。ここではそれぞれの症状を解説します。
女性の症状
女性がトリコモナスに感染すると、膣だけでなく次第に子宮頚管や膀胱、尿道にも感染します。感染すると以下のような症状が現れます。
- 強い異臭
- 白や黄色の泡状のおりものが大量に出る
- 陰部のかゆみや痛み
- 性行為時に痛みがある
- 排尿時に痛みがある
- 外陰部が炎症を起こしてただれる
- 外陰部が熱を持ったように感じる
など
特に外陰部のかゆみや熱を持つ、おりものの色の変化と強い臭いはトリコモナスの代表的な症状です。どの症状が強く出るかは個人差があり、また、感染者の20~50%には自覚症状はありません。また、妊娠中の女性が感染すると、早産や流産につながることがあります。
男性の症状
男性がトリコモナスに感染すると、まずは尿道に感染し尿道炎の症状が起こります。具体的には以下のような症状が現れます。
- 尿道から膿が出る
- 排尿時の軽い痛み
- 尿道のかゆみ
- 尿道の違和感やムズムズ感
- 尿道が熱を持ったように感じる
など
男性の場合は女性に比べて症状の種類が少なく、尿道に集中して起こります。女性と同じように無症状の場合もあり、前立腺や精のうに感染が広がらず、尿道にのみ感染している場合は、排尿時に原虫が排出されることもあります。
男性も女性も自分に症状がない場合でも、パートナーや同居家族に感染している場合があります。そのため、パートナーや家族も検査を受けることが大切です。
トリコモナスの検査方法
トリコモナスは、婦人科や泌尿器科、性病科で検査を受けることができます。医療機関で行う検査は、尿や分泌物を採取してその検体にトリコモナスがいるかどうかを確認します。主な検査は、以下の方法です。
* 鏡検法
尿道や膣からの分泌物や尿を採取して、顕微鏡で採取した検体の中にトリコモナス原虫が活動しているかを確認する方法です。比較的すぐに結果が出ますが、原虫を見落としやすいのが欠点です。
- 培養法
尿道や膣からの分泌物を、膣トリコモナス培地で培養を行う方法です。判定までに時間を要するのが欠点ですが、鏡検法に比べて見落としが少ないのが利点です。
- 核酸増幅法
トリコモナス原虫の遺伝子を増幅させて検出する方法です。短時間で結果が出て感度も良いため、この検査方法を導入している医療機関を選ぶと、短時間でより適切な結果を得ることができます。
検査は、男女ともに細い綿棒のようなものを使い尿道や膣の分泌液をぬぐい取るだけなので、検査による痛みや不快感は少ないでしょう。クラミジアなどの検査と異なり、病原体が組織内に入り込むことはないため、血液検査による診断はできません。
トリコモナスの治療方法
トリコモナスの治療は男女ともに抗原虫薬の「メトロニダゾール」を10日間服用します。女性では、治りにくい場合や再発する場合は、膣剤を使用して直接膣トリコモナス原虫を攻撃します。また、薬の使用のほかに膣を洗浄して、膣トリコモナス原虫を洗い流すこともあります。ただし、妊娠中は、内服薬の成分が胎盤を通じて胎児に届く可能性があるため、内服薬は使用しません。
また男女ともに飲酒すると副作用のリスクが高まるため、内服治療中は飲酒を控えましょう。「メトロニダゾール」の主な副作用は、かゆみ、発疹、吐き気、下痢、黒色便、上腹部痛などです。まれに抹消神経障害や中枢神経障害、髄膜炎、急性膵炎などの重篤な副作用を起こすことがあります。内服を開始して、副作用のような症状が現れたら、すぐに担当の医師に相談しましょう。
治療後は、再度受診して自覚症状の有無と、検体中に膣トリコモナス原虫がいるかどうかを確認します。検体中に、膣トリコモナス原虫が確認できなければ治癒したと判断します。女性の場合は生理のときにトリコモナス原虫が増殖することがあるため、月経後に再度確認が必要です。
トリコモナスの治療期間
トリコモナスに必要な治療期間は7~10日程度です。現在では、治療薬の内服期間は10日ですが、場合によっては2週間程度かかることもあります。治療日数が異なるのは、症状の進行具合に個人差があるためです。10日間の内服ののち、再度受診が必要になりますが、このとき医師が治療終了か継続かを判断します。
通常は、内服治療を行うと90~95%で膣トリコモナス原虫の消失が見られます。とはいえ、パートナーや同居家族に感染している場合は、治療が完了しても再感染する可能性があります。それゆえに、同時期にパートナーや同居家族も一緒に治療を行うことが大切です。
トリコモナス原虫は肉眼で確認できないため、感染しても無症状の場合も多くあります。外陰部、尿道のかゆみや炎症が収まったからといっても、その部位の症状が落ち着いただけで膣トリコモナス原虫が膀胱や子宮、前立腺などに広がっている可能性があります。
そのため、自己判断で治療を中止しないようにしましょう。また、指定された期間、薬を服用したあとは必ず検査を受けてください。
トリコモナスの予防方法
トリコモナスは、コンドームの使用や不衛生な生活用品にむやみに接触しないことで予防できます。ここでは、それぞれの予防方法と注意したいポイントを解説します。
コンドームを使用する
妊娠を望まない性行為をする際は、コンドームを着用しましょう。もし、どちらかがトリコモナスに感染していてもコンドームを使用していれば、膣トリコモナス原虫が膣内や尿道へ侵入するリスクが低くなります。コンドームを使用するときは、破れや亀裂などの異常はないか、使用期限が過ぎていないかを確認して使用しましょう。
また、男性の場合は、性行為をした後にすぐに排尿することで、膣トリコモナス原虫を排出することができます。ただし、女性は膣内に侵入するため、排尿による予防効果はありません。
そのほか、不特定多数の相手と性行為をしないことや、抵抗力が弱くなる生理中に性行為をしないことも大切です。
不衛生な生活用品に接触しない
トリコモナスは、性感染以外にも感染者の体を拭いたタオルや感染者が使用した便器などでも感染します。感染を防ぐためには、不衛生な生活用品との接触機会を減らしたり、使用する前に対策を講じたりすることが大切です。
まずは、タオルでの感染を防ぐために、お風呂後は他人とタオルを共有しないようにしましょう。バスタオルを複数枚使うことに抵抗があるときは、フェイスタオルよりも幅広のタオルを使うのもおすすめです。
公共の入浴施設を使うときは、椅子に性器が当たらないように注意しましょう。トイレを使用するときも同様に、性器が当たらないように心がけます。使い捨ての便座シートを使うのも有効です。
トリコモナスに関するよくある質問
ここからは、トリコモナスに関するよくある質問をまとめました。皆さんが気になるポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
特徴はどのようなもの?
トリコモナスは、性器のかゆみやおりものの変化を特徴とする病気です。また、感染するとキツイ臭いがあるため、普段との違いに気づきやすいでしょう。とはいえ、このような症状は膣カンジダ症でも現れます。2つの病気はよく似ており、膣カンジダ症もおりものに変化が見られるのが特徴です。
両者の大きな違いとして、膣カンジダ症は真菌が病原体となり、常時私たちの皮膚や粘膜にもわずかながら存在しています。風邪や生理前後で抵抗力が低下すると発症する点が、トリコモナスとの大きな違いです。
一方、トリコモナスは、膣トリコモナス原虫が病原体です。乾燥には非常に弱いですが、水中でも長時間生存できるため、性行為以外でも感染します。
素人が両者の違いを見分ける方法は難しいことから、気になる症状があれば検査を受けることが大切です。
原因はなに?
前述した通り、トリコモナスの原因は、性行為などで膣トリコモナス原虫が性器に入り込むことです。精液や膣分泌液に潜伏するため、コンドームを使用しない性行為で感染します。
さらに、感染者が使用したタオルや下着に触れることでも感染することがあります。また、膣トリコモナス原虫は水の中でも長時間生存するため、浴槽や濡れたタオルなどからも感染の危険があります。そのため、性行為の経験がない子どもでも、感染者と同じタオルや浴槽などを使用することで感染するため注意が必要です。
トリコモナスは自然治癒する?
トリコモナスは、残念ながら自然治癒はできません。治療薬である抗原虫薬の「メトロニダゾール」を使用しなければ、病原体は死滅しないのです。
トリコモナスを放置していると、女性の場合には病原体が卵管や骨盤内にまで達し、不妊症や早産・流産のリスクを高めます。また、男性では前立腺炎や精巣上体炎を引き起こし、これも男子不妊の原因になります。
自然治癒しない病気であるため、かゆみや分泌物に変化があれば、必ず医療機関を受診しましょう。
完治するまでどのくらいかかる?
トリコモナスの治療にかかる期間は約7~10日程度です。病状によっては追加の治療が必要になることがあり、2週間程度かかることもあります。治療日数が異なるのは、症状の進行具合に個人差があるためです。
10日間の内服ののち、再度受診が必要になりますが、このとき医師が治療終了か継続かを判断し、検体内に病原体がいなければ完治したものとみなします。
通常は、内服治療を行うと90~95%で膣トリコモナス原虫の消失が見られます。とはいえ、パートナーや同居家族に感染している場合は再感染する可能性があるため、同居家族も検査・治療が必要です。
まとめ
トリコモナスは、性器にかゆみと強い臭い、分泌物の変化が現れる性感染症です。自然治癒しない病気であり、性行為だけでなくこれまで性経験のない人や子どもでも、タオルや便器、浴槽から感染することがある病気であるため、同居家族の感染にも注意が必要です。
薬を飲めば、病原体を死滅することができますが、中には自覚症状がない人もいます。周囲の人の感染が分かり、気になる症状や心当たりがあれば検査を受けることが大切です。
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