【医師監修】軟性下疳(なんせいげかん)とは|症状・診断・治療法と悪化を防ぐ3つの注意点

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

性器に激しい痛みを伴うことがあったら、非常に心配になりますよね。もしかしたらそれは軟性下疳(なんせいげかん)という感染症かもしれません。

軟性下疳は非常に痛い病気ですので、放置せずに早期に対処することが重要です。治療を開始すると3日以内に症状が弱まり、1週間以内にかなり改善するので、安心してください。

本記事では、軟性下疳について、どのような症状なのか、どのように見分けるのか、そして治療法と悪化させないための注意点を解説します。

軟性下疳とは

軟性下疳は、性行為で感染する性感染症であり、性器のヒダに激しい痛みを伴う潰瘍が出現することが特徴です。

軟性下疳菌が人から人へと感染することで起きる病気です。主に東南アジアやアフリカ、南米で流行っている疾患で日本国内ではほとんど感染することはありませんが、東南アジアへの旅行者などが感染してくることがあります。

治療を開始すれば3日以内に症状が弱まり、1週間以内に改善しますが、放置すると悪化が速いため早期受診が極めて重要です

軟性下疳の症状と発症箇所

軟性下疳の症状は非常に特徴的で、激しい痛みを伴うことが最大のポイントです。

軟性下疳では、女性器のヒダ(陰唇)に痛みのある丘疹と呼ばれるブツブツが出現します。この丘疹自体も痛みを伴いますが、丘疹が潰れるとさらに激しい痛みを伴う潰瘍(かいよう)となります。潰瘍とは、皮膚などの組織よりも下層の組織が傷つき、皮膚が掘れたような状態になることです。

また、股関節付近のリンパ節も腫大し、コリコリと触れるようになります。このリンパ節も痛みを伴うようになります

軟性下疳の診断方法と梅毒との見分け方

軟性下疳の診断は、その激しい痛みを伴う特徴的な皮疹や潰瘍から、比較的簡単に行うことができます。

軟性下疳の診断方法

軟性下疳は外部に症状があらわれるため、病院では見たり触ったりすることで、軟性下疳であるかどうかを判断できます。

軟性下疳の疑いがある場合には、染色鏡検培養法という手法で検査をします。これは、患部の分泌物を綿棒などで採取し、原因菌である軟性下疳菌が存在しているかを確認することで確定診断を行う方法です。

【注意】 患部に触れると激しい痛みを生じるため、局所麻酔薬で事前に痛みを抑える処置をおこなってから検査をすることもあります。

梅毒(硬性下疳)との見分け方は?

性器に潰瘍ができる病気には他にも「梅毒」があります。梅毒で起きる潰瘍は「硬性下疳」と呼ばれています。皮膚が掘れている潰瘍の底が硬く、痛みがありません。股関節のリンパ節も軟性下疳と同様に腫大してコリコリと触れますが、痛みがありません。

最大の区別点は、潰瘍やリンパ節の痛みの有無です。軟性下疳は激痛を伴いますが、梅毒は痛みを伴わないことが特徴です。

その他の感染症についても心配な方は、性病検査キットを使って自宅で簡単にチェックする方法があります。

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軟性下疳の際に行く診療科は

軟性下疳は性器に症状が出るため、どの病院の行くか迷われる方もいらっしゃいます。性器に症状がある場合は、男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診してください。

軟性下疳は激痛を伴います。さらに性感染症であるため、人に移す可能性もあります。治療にも抗生物質が必要ですし、様子を見ている間に症状が悪化する可能性もあります。そのため、感染が疑わしい場合は、なるべく早く病院での受診をおすすめします。

軟性下疳の治療方法

治療では飲み薬と塗り薬の抗菌薬を使用します。治療が成功した場合は3日後には症状が軽減し、7日後以内にはかなり改善します。ただし、まれに抗菌薬に耐性のある耐性菌である場合があるため、その場合は異なる抗菌薬を用いて再度治療をおこないます。

皮疹や潰瘍などの症状がおさまったら軟性下疳の治療は完了です。ただし軟性下疳に感染した場合は別の性感染症の併発が疑われます。時には梅毒やHIVとの混合感染の可能性もあります。他の検査が必要となりますので、医師にご相談ください。

軟性下疳に有効な薬剤と注意点

軟性下疳の治療には、アジスロマイシンやセフトリアキソン、シプロフロキサシンといった抗菌薬を服用します。また潰瘍面には、ゲンタマイシン軟膏を塗布します。どの薬を使うかは医師が判断致しますのでご相談してください。

軟性下疳に感染した後に必要な検査

軟性下疳は性感染症であり、HIVや梅毒にも感染している場合があります。そのため、潜伏期間の問題もあり、感染から3ヶ月以内に他の感染症の検査を受ける必要があります。

軟性下疳を悪化させたいために

軟性下疳は皮疹を潰すと症状が悪化します。そのため、できるだけ刺激を与えないようにしてください。可能な限り早めの受診をおすすめします。軟性下疳は初期の段階でも十分痛いですが、症状が悪化するとさらに痛みが激しくなってしまいます。早期診断、早期治療がもっとも重要です。

まとめ

・軟性下疳は性器に柔らかい皮疹が多数出現し、激痛を伴う性感染症です。症状は特徴的であるためご自身または病院での診断は比較的容易です。

・軟性下疳が発症した際は、口腔内であれば耳鼻咽喉科に。性器に発症した場合、男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診してください。

・軟性下疳は抗生物質の服用と塗り薬によって速やかに治療できます。悪化するとより痛みが強くなるため、なるべく早い受診がおすすめです。

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参考文献

性感染症ガイドライン2016
http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016.pdf

日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa24/q10.html