感染期間によって梅毒の症状は異なる!検査・治療方法についても紹介

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

梅毒は昔の病気と思われてきましたが、実はここ数年、梅毒にかかる若い方が増えています。梅毒の症状は感染してからの期間によって異なります。今回は、梅毒とはどんな病気なのか、梅毒の症状と出現する時期について詳しく説明するとともに、梅毒の検査や治療方法をご紹介いたします。心当たりのある方は、その時期の症状に当てはまるものがないか、確認してみてください。

梅毒とは

梅毒とは、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum subsp. pallidum)という細菌の一種が感染することで起こる病気です。

梅毒は、代表的な性感染症(STD: Sexually Transmitted Diseases)の一つです。性感染症とは、性行為により病原体を含む分泌液(精液、膣からの分泌液など)や血液に触れることで、粘膜や傷口から感染する病気のことです。通常の性行為(膣性交)はもちろんのこと、口腔性交(オーラルセックス:フェラチオ、クンニリングス)や肛門性交(アナルセックス)でも感染します。

梅毒は感染症法により5類感染症に指定されています。また、梅毒は全数報告の対象となっている病気であり、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出なければなりません。

ここ数年、梅毒の患者数は飛躍的に増加しています。特に30歳未満の若い世代に増えているのが特徴的です。

【期間別】梅毒の症状

梅毒は、感染してからどのくらい時間が経っているかによって、現れる症状が全く異なります。分け方には諸説ありますので、それぞれについて簡単に解説していきます。

妊婦さんが梅毒に感染すると、40%くらいの確率で死産となったり、出産後すぐに赤ちゃんが死亡したりします。胎盤を通じて赤ちゃんに梅毒が感染した場合、無事に出産を終えても後からいろいろな臓器の障害が出ることがあります。これを先天梅毒と呼んでいます。先天梅毒のうち、生後3ヶ月頃に出てくる症状を早期先天梅毒、学童期以降に症状が出てくるものを晩期先天梅毒として区別しています。

3週間経過後

感染から3週間くらいで現れる症状のことを、早期顕性梅毒第一期と呼びます。梅毒トレポネーマが感染した場所(性器や外陰部、口の中・唇、肛門など)に出現するしこり(初期硬結(こうけつ))や潰瘍(硬性下疳(こうせいげかん))など、梅毒に特徴的な症状が現れます。また、痛みがないのに股の付け根のリンパ節が腫れることがあります。

これらの症状は、治療をしなくても数週間で消えてしまいます。

3ヶ月経過後

早期顕性梅毒第一期の症状が消えた後、感染してから数えるとちょうど3ヶ月を経過したくらいの時期に現れる症状のことを、早期顕性梅毒第二期といいます。

主な症状としては、陰部や手のひら、足の裏などを含む全身の特徴的な小さな赤い発疹(バラ疹)、扁平コンジローマ、まだら状の脱毛などです。バラ疹は、かゆみがないのが特徴のひとつです。バラ疹以外にも、あせもやニキビ、またはイボ状の湿疹、ベトベトした白斑のような湿疹が出ることもあります。同時に発熱や身体のだるさ(倦怠感)、食欲不振、体重減少やリンパ節の腫脹などの全身性の症状や、のどの痛み、口内炎、頭痛やめまい、関節炎や関節痛、筋肉痛など、全身にさまざまな症状が現れます。

この時期に起こる髄膜炎や目の症状などの脳神経系症状は、早期神経梅毒と呼ばれます。これは下で説明する晩期顕性梅毒で生じる神経梅毒とは別のものと扱われます。

早期顕性梅毒第二期の症状も、第一期と同様、治療をしなくても数週間から数ヶ月で消えてしまいます。

3年経過後

梅毒感染後1〜10年を経過したあたりで、梅毒に特徴的なゴムのようなかたまり(ゴム腫)が皮膚や筋肉、骨、そして肝臓や腎臓などにできることがあります。この時期を梅毒第三期と呼んでいます。ゴム腫は周りの細胞を次々と壊していくため、たとえば鼻のあたりにゴム腫ができた場合、鼻が欠けることがあります。

また早期顕性梅毒の症状が消えたのち、晩期梅毒の症状が出るまで、全く何も症状がない時期が数年間から数十年間続くことがあります。この時期のことを潜伏梅毒といいます。潜伏梅毒の期間は、梅毒の症状は何もないのに血液中には梅毒の抗体反応が見られます。

10年経過後

梅毒に感染してから10年以上経過した後に起こる症状を晩期顕性梅毒(または梅毒第四期)と言います。現代では早期顕性梅毒第一期または第二期のうちに治療を開始できることがほとんどであるため、放置されて晩期顕性梅毒の状態で見つかることはあまりありません。

晩期梅毒の主な症状は、心血管梅毒と神経梅毒です。心血管梅毒は、心臓に血液を送る冠動脈の狭窄、心臓の中にある逆流防止弁の損傷、そして大動脈が拡張しこぶのように腫れる大動脈瘤などです。神経梅毒は、梅毒トレポネーマによって脳が侵されて起こる進行麻痺や脊髄が侵される脊髄癆(せきずいろう)などが代表的な症状です。

晩期顕性梅毒のいずれの症状も非常に重く、特に心血管梅毒は命に関わる状態になることも少なくありません。また神経梅毒が進むと、認知症のような症状が出たり、手足の麻痺が進行したりして、社会生活が満足に営めなくなります。

残念ながら、晩期顕性梅毒の状態で治療を始めても、心血管梅毒や神経梅毒にかかった組織を元に戻し症状を改善させることはできません。

梅毒の検査方法

梅毒の検査方法は、病原体である梅毒トレポネーマを検出する方法と、血液検査で梅毒トレポネーマに対する抗体を確認する方法の2種類があります。

引用:公益社団法人 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020」

梅毒トレポネーマの検出は、初期硬結や硬性下疳の部位の組織を顕微鏡で見て確認します。

梅毒の血液検査には、非トレポネーマ脂質抗体を見る梅毒血清反応(STS)と梅毒トレポネーマ抗体(TPHA、TPPA、TPLA、TP抗体、FTA-ABS等)の2種類があります。この2種類を組み合わせることで、感染の有無や感染の時期、そして治療が必要かどうかを判定します。現在日本で使用できるSTSはRPR法のみです。

感染したすぐの時期は、梅毒トレポネーマが身体の中に住んでいても、梅毒血清反応が陰性となることがよくあります。心当たりがある性行為から4週間以上経ってから、検査を受ける必要があります。

梅毒とHIV両方に感染しているケースが10〜20%あり、梅毒の検査と同時にHIVの検査を受けることが望ましいです。

梅毒の治療方法

梅毒の治療方法は、抗菌薬の投与です。これまでは抗菌薬の飲み薬を組み合わせて使用する方法が一般的でしたが、2021年より、非常に有効性が高く海外では最も使用されてきたペニシリンG(ベンザチンペニシリン筋注)が日本でも使用できるようになりました。神経梅毒については、ベンジルペニシリン(水溶性ペニシリン)の注射を用います。

梅毒は、「症状がなくなったから治った」というタイプの病気ではありません。抗菌薬は決められた期間きっちり内服しましょう。症状が消えたからと薬を勝手にやめると、梅毒トレポネーマが生き残ってしまう事があります。治療が成功したかどうかは、症状や血液検査などで医師が判断します。

梅毒は男女間でお互いに感染させ合うピンポン感染が起こりやすいため、パートナーと一緒に治療を受けることが重要です。

梅毒の症状に関するよくある質問

ここでは、梅毒の症状に関するよくある質問を集めました。ここにある項目以外に疑問点やご不安な点などがありましたら、お気軽に当クリニックまでお問い合わせください。

梅毒にどうやって感染する?

梅毒は、性感染症の代表的な病気の一つです。性行為および性行為類似行為(口腔性交や肛門成功など)で感染します。梅毒トレポネーマは酸素が少ない環境でしか生き残れない細菌であり、感染のほとんどは早期顕性梅毒第一期・第二期の患者さんとの粘膜の性的接触によるものです。早期顕性梅毒第一期・第二期の患者さんからは感染力のある菌が排出されており、粘膜や皮膚に小さな傷があると、そこから梅毒トレポネーマという細菌の一種が身体の中に入ります。

また、梅毒は免疫ができない病気なので、何度でも繰り返し感染するのも特徴の一つです。決まったパートナーがいる方は、ぜひパートナーと一緒に治療を受けてください。決まったパートナーがおらず不特定多数との性行為を繰り返している方、また職業的に性的接触が避けられない方は、梅毒を含めた性感染症にかかる確率が上がります。できれば性行為時には確実にコンドームを使用し、症状がなくても定期的に検査を行いましょう。

梅毒によるしこりはどのようなもの?

梅毒によるしこりには、早期顕性梅毒第一期で見られる初期硬結と、梅毒第三期で見られるゴム腫の2つがあります。

初期硬結は、主に性器や唇、口の中や肛門といった局所に見られます。初期硬結はそのまま放置すると崩れていき、中がえぐれた潰瘍状の硬性下疳となることがあります。特に痛みがないのが特徴です。硬性下疳から滲み出す液体には、梅毒トレポネーマがたくさん含まれており、この液体に粘膜や皮膚の傷が触れると感染を起こすのです。

第三期でみられるゴム腫は骨や筋肉、肝臓などの臓器に見られます。

梅毒の全身症状はどのようなもの?

梅毒は性感染症の一つではありますが、性器など局所の症状だけではなく、全身にさまざまな症状が出るのが特徴です。梅毒の全身症状としては、発熱や身体のだるさ(倦怠感)、食欲不振、体重減少やリンパ節の腫れ、のどの痛み、口内炎、頭痛やめまい、関節炎や関節痛、筋肉痛などがあります。

これらの症状はどんな病気でも現れる可能性のあるありふれたものであり、梅毒であると気がつかないこともあります。梅毒の心当たりがある方にこのような症状が出た場合、バラ疹のような全身の赤っぽい皮疹や、リンパ節の腫れなどの症状が他にないかを確認しましょう。

梅毒の感染にはいつ気づく?

梅毒の感染に気がつく時期には個人差があります。早い方だと、早期顕性梅毒第一期の症状が出る3週間後くらいに気がつくことが多いです。第一期、第二期ともに症状が出ない場合、数十年も気がつかないままでいることも少なくありません。この場合は晩期顕性梅毒による症状が出て、初めて梅毒の感染に気がつくことになります。

梅毒は、性行為の経験がある人なら誰でもかかる可能性のある病気です。症状がないまま、他の人にうつすことも珍しくありません。「決まったパートナーとしか性行為をしないから大丈夫」というわけではないので、性行為経験のある方は一度検査をしておくと安心です。特にご結婚が決まった方は、ブライダルチェックの一つとして梅毒の検査をお勧めしています。梅毒に知らずに感染していた場合、赤ちゃんが死産で生まれてきたり、赤ちゃんに梅毒をうつしてしまったりする可能性があるので、他の性感染症と一緒に検査しておくと良いでしょう。

まとめ

以上、梅毒の症状を時期別に分けて説明するとともに、梅毒の治療法やよくあるご質問にお答えいたしました。梅毒は、症状がなくなっても身体から病原体が消えたわけではなく、数十年後に命に関わる症状が出てくる病気です。現在症状があるかどうかに関わらず、梅毒かな、と心当たりのある方は、まず検査を受けてみましょう。ほとんどの自治体の保健所では、匿名・無料で検査を受けることができます。「梅毒の検査を受けたいけど病院でお願いするのが恥ずかしい」という方は、上手に保健所を利用しましょう。当クリニックでも梅毒を含めた性感染症の検査を行っております。プライバシーに配慮し、秘密厳守で診療を行っております。安心してお越しください。

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